こんにちは!こばやし内科クリニックの小林です。
あなたは「中性脂肪が高いですね」と言われたことがありますか?
そう言われてから、どう対処しましたか?
「中性脂肪が少しぐらい高くても、大したことないか〜」と思われましたか?
『油などの脂質を制限する』という間違ったアプローチをしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、中性脂肪が高い状態を放置すると、健康を害するリスクが高まります。
この記事では中性脂肪を下げるために必要な基礎知識と対処法についてお話ししていきます。
カラダにいい油は長生きのためには必要だの〜!
今回は中性脂肪についてのお話をします。
検診や人間ドックなどで一度でも「中性脂肪が高い」と言われた方は、非常に多いと思います。
医師からは対処法についてはどのように説明されたでしょうか?
十分に対処法を説明されないことも多々あることでしょう。
さて、あなたは『中性脂肪』と聞くと、どんなものを想像しますか?
やはり皮下脂肪のような、脂肪の塊のようなものを考えるでしょうか。
そして、「バターやラードなど動物性の油を控えればいいのかな」と考えるでしょうか。
それはあまり正しいとは言えません。
中性脂肪に正しく対処するためには、『中性脂肪がどのようにして作られているか』、『血液中の中性脂肪はどのような時に増えてしまうか』ということを理解しておく必要があると思います。
今回の記事をしっかりお読みいただき、中性脂肪を下げる知識を身につけていただけると幸いです。
それでは、良かったら最後までお付き合いくださいね。
油の理解を深めるために、次の記事をどうぞ。
目次
そもそも中性脂肪とは何か
私達が普段、『中性脂肪』と呼んでいるものは、何のことを指しているのでしょうか。
中性脂肪とは簡易的な呼び名であり、化学的な正式に言うと『トリアシルグリセロール』と呼ばれています。
トリアシルグリセロールは『トリグリセリド』と言われることの方が多いようです。
分子構造は次のようになります。
トリグリセリドは、グリセリン(グリセロール)と3つの脂肪酸が結合しているものです。
脂肪酸にはさまざまな種類があります。
動物性の脂質であるバターやラード、肉の脂肪は『飽和脂肪酸』と呼ばれ、室温では固体の状態です。
植物性の脂質は常温で液体であり、『不飽和脂肪酸』と呼ばれ、一般的には『油』のことを指します。
ご存知の通り、植物性の油には多くの種類があり、『オリーブオイル』、『キャノーラ油』、『亜麻仁油』などが代表的なものです。
不飽和脂肪酸は脂肪酸の構造から大きく3つに分類され、オメガ3系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸、オメガ9系脂肪酸に分けられます。
トリグリセリドは飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸など、さまざまな種類の脂肪酸から構成される物質なのです。
ですので、トリグリセリドの中でも質の良し悪しがあったり、酸化しやすいものがあるということです。
血液検査の中性脂肪は実際に何を測定している?
それでは、健康診断や人間ドックで必ず含まれている血液検査の項目である『中性脂肪』は、血液中の何を測っているのでしょうか。
中性脂肪は単独で血液の中を運ばれるわけではありません。
中性脂肪は『リポタンパク』と呼ばれる蛋白質と結合して、血液中に存在しているのです。
中性脂肪と結合するリポタンパクには2種類あり、『カイロミクロン』と『VLDL』があります。
血液検査で測定している中性脂肪の数値はカイロミクロンとVLDLの合計を表しているわけです。
このうち、VLDLは曲者ですので、要注意です。
VLDLのどこが曲者なんでしょうか?
それについては、後で説明いたします。
それでは、カイロミクロンとVLDLについてそれぞれ説明します。
カイロミクロン
消化管を介して、食物中から吸収された中性脂肪はカイロミクロンというリポタンパクと結合して、リンパ管に入ります。
リンパ管を通って、鎖骨の下にある静脈に入り、血液に合流します。
そして、重要な栄養素の一つである脂質として全身に運ばれ、細胞を作るための原料となったり、ホルモンの材料として使われます。
このカイロミクロンと結合した中性脂肪については、正常な代謝の状態であれば食後8時間ほどでほぼ消失するため、体にとっては特に危険なものではないと考えられます。
VLDL
VLDLはvery low density lipoprotein(超低密度リポタンパク)のことです。
コレステロールを運ぶLDLと似てますが、VLDLが運ぶのは主に中性脂肪です。
このVLDLが運ぶ中性脂肪は、カイロミクロンが運ぶ中性脂肪とは作られ方が大きく異なるのです。
カイロミクロンが運ぶ中性脂肪は、食物中の脂質が吸収されてできたものであると説明しました。
それに対して、VLDLが運ぶ中性脂肪は、食物中の糖質から作られるものなのです。
つまり、食物中から摂取した糖質が有効に利用されずに余ってしまうと、肝臓で中性脂肪に作り変えられて、VLDLと結合して全身に運ばれることになるわけです。
食事を摂ってからVLDLが作られるまでは、半日程度かかります。
そして、VLDLには注意すべきことがあります。
血糖値や中性脂肪が高い状態の血液中に存在するとsmall dense LDLという酸化しやすいリポタンパクに変化やすくなると言われています。
small dense LDLによって運ばれたコレステロールは容易に血管に蓄積し、そこに炎症を作ってしまいます。
それが動脈硬化の元になるわけです。
まとめると、『食物中の糖質から作られた中性脂肪はVLDLを作り、動脈硬化の原因となってしまう』ということです。
ここでも、糖質の取り過ぎは良くないことを理解していただけると幸いです。
空腹時と食後における中性脂肪の数値の違い
ここまでの話を理解いただけると、中性脂肪の数値が空腹時と食後で大きな差が出やすいことことがおわかりでしょう。
つまり、食後に測定する中性脂肪は主として、カイロミクロンの量をはかることになり、主に食事中の脂質の量を反映します。
それに対して、空腹時に測定する中性脂肪は、主にVLDLの量をはかることになります。
このことから、空腹時に測定する中性脂肪の数値を適切にコントロールすることが、より大事であることがわかります。
中性脂肪の数値が上がる他の原因
中性脂肪の数値が上がる原因は今まで述べてきた『脂質』と『糖質』の他に、アルコールによる影響も考えられます。
アルコールを常飲している人の中性脂肪の数値が高いことは、よく知られています。
その理由としては、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが、脂質の代謝を遅らせてしまう、ということです。
アルコールの代謝にはビタミンB群の一つである、ナイアシンが深く関わっています。
また、脂質の代謝にもナイアシンが関与しています。
お酒を飲み過ぎると、ナイアシンがどんどん消費され、アルコールは代謝しにくくなり、さらに脂肪の代謝も悪くなります。
そのことによって、中性脂肪が増えてしまうわけです。
アルコールを摂取して、中性脂肪が増えるのは12時間後がピークであると言われています。
ですので、血液検査をする前の日は、アルコールも摂取しない方がいいでしょう。
- 糖質が多いもの
- 脂質が多いもの
- アルコール
中性脂肪の数値を適正に保つ食生活
どんなことが原因で中性脂肪が増えるのか、ここまでのお話でご理解いただけましたでしょうか。
それでは、具体的にどのような食生活を送ればよいでしょうか。
ポイントを挙げてみます。
- 良質な脂質の摂取を心がける
- 糖質は最小限にする。特に果物に注意。
- 糖分の入った飲み物は飲まない
- アルコールは毎日飲まない
良質な脂質の摂取を心がける
中性脂肪をコントロールするためには、脂質の摂取にはさほど気を遣う必要はないことはご理解いただけましたでしょうか。
むしろ、良質な脂質を多く摂取し、カイロミクロンを介して全身にしっかり配る必要があるのです。
良質な脂質とは、オメガ3系脂肪酸の多い油であったり、ナッツ類であったり、アボカドでもいいと思います。
ココナッツオイルやMCTオイルのような中鎖脂肪酸もエネルギーになるのが早いため、利用すべきですね。
また、バターやラードなどの常温で固体である飽和脂肪酸は今では体に有害なものではないことがわかってきていますので、気にせず食べて大丈夫です。
できるだけ避けるべきは『酸化した油』や『トランス脂肪酸』です。
お惣菜やお弁当に入っている揚げ物は、ほとんどが油が酸化していると思われますので、できるだけ控えた方がいいですね。
トランス脂肪酸が何かは、ご存知ですよね??
糖質は最小限にする
前述しましたように、簡単に言えば『体の中で余った糖質は、脂肪になってしまう』ということであり、中性脂肪もその一つです。
白いご飯、パン、麺類、果物などは血糖値にも影響し、太りやすい食べ物です。
特に果物は中性脂肪を増やしてしまう作用が強い食品です。
『中性脂肪が高い』と言われている方は、これらの食品を取り過ぎていないかを見直してみてください。
糖分の入った飲み物は飲まない
自販機やコンビニなどで、飲み物はいつでも手に入りますね。
水やお茶、ブラックコーヒー以外の清涼飲料水には、ほとんどに糖分が入っています。
スポーツドリンク、野菜ジュースや乳酸菌飲料、飲むヨーグルトなどにも含まれていることが多いです。
それも異性化糖と呼ばれる『果糖ブドウ糖液糖』や『ブドウ糖果糖液糖』です。
これらは最初から最小単位の糖に分解されているため、飲むとすぐに血糖値がグンと上がってしまいます。
そのことによって、中性脂肪が増えてしまう原因にもなってしまいます。
また、スムージーを日常的に摂取する方も、ご注意ください。
野菜や果物などの繊維が細かくなることで『果糖』や『ブドウ糖』が体に吸収されやすくなっていますので、血糖値の上昇、中性脂肪が増えてしまう原因を作ってしまうことがあります。
アルコールは毎日飲まない
前述しましたように、アルコールは脂肪の代謝を著しく低下させてしまいます。
病院においても、アルコールを常飲されている方の中性脂肪がかなり高くて、びっくりしたことが何度もあります。
アルコールによって徐々に肝臓の機能を悪くしてしまうこと、また『ナイアシン』を消耗してしまうことが中性脂肪を上昇させる要因になります。
少量であっても、アルコールは毎日飲まない方が無難だと思います。
おわりに
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コレステロールは数値に一喜一憂するよりも、『酸化させないこと』が大事だと以前にお伝えしました。
中性脂肪はしっかりと数値をコントロールすることが重要です。
やることはシンプルです。
『糖質やアルコールを取り過ぎないこと』です。
これだけで、今まで中性脂肪が下がらなかった方も、効果が期待できると思います。
それでも、なかなか下がらない方は、ぜひ一度ご相談ください。
それではまた。
中性脂肪には2種類あること、検査の時間でその種類が異なることが初めて分かりました。それ以外の情報も大変参考になりました。有り難うございました。
中性脂肪は2種類あること、検査の時間でその種類が異なることが初めて分かりました。それ以外の情報も大変参考になりました。有り難うございました。
コメントいただき、ありがとうございます!
血液検査をされる時に、ぜひ意識してみてくださいね。