オレは鉄なんて知らないな!カルシウムの粉はよく食べてるぜ!
あなたは、人間の体には鉄がどのくらい必要か考えたことがありますか?
僕は少し前まで、鉄のことをかなり甘く見ていました(汗)。
実際、現代人のほとんどは鉄不足だと言われています。
特に生理のある女性の鉄不足はほぼ必発です。
鉄不足はホルモンバランスを乱し自律神経の調子が悪くなり、体のエネルギーも著しく低下し疲れやすくなります。
「自分はホウレン草、小松菜を毎日食べているから大丈夫!」と思っていらっしゃる方。
実はほうれん草などの鉄が豊富な野菜を食べていても、鉄はなかなか充足しないのです。
その理由もあとで解説いたします。
ぜひ、最後までお読みくださいね。
目次
鉄はなぜ大事なの?
『鉄』が体にとって、すごく大事であることは、ご理解されていることでしょう。
鉄の働きを挙げてみます。
- ヘモグロビンとなって、酸素を運搬する。
- ミオグロビンとなって、筋肉の中で働く。
- 酵素の一部となって、エネルギー代謝を担ったり、薬物の代謝に関わる。
- 脳内ホルモンを合成するのに不可欠。
ヘモグロビンとなって、酸素を運搬する
ヘモグロビンという言葉はよく聞きますよね。
血液検査をすると、『ヘモグロビン』という項目は必ず出てきます。
ヘモグロビンは貧血があるかどうかの目安になりますね。
鉄の最も大事な働きは、ヘム鉄となってヘモグロビンを作ることです。
赤血球の中のヘモグロビンが全身の細胞に酸素を運搬します。
そして、『赤血球の質』も大事なんですね。
小さ過ぎても、大き過ぎてもよくありません。
鉄が足りないと、赤血球は小さくなります。
葉酸やビタミンB12が足りないと、赤血球の成長が妨げられ、赤血球は大きくなってします。
赤血球が大きいならいいじゃない?と思われますか?
赤血球が大きいと、未熟な状態で、酸素の運搬能力も低いんですね。
小さ過ぎず、大き過ぎない赤血球が一番元気に酸素を運んでくれるのですね。
ミオグロビンとなって、筋肉の中で働く
ミオグロビンは響きがヘモグロビンと似ていますね。
ミオグロビンは筋肉の中で酸素を補給する役目を果たします。
ヘモグロビンが血液の中で酸素を運び、筋肉に酸素を届け、ミオグロビンが酸素をキャッチするという流れですね。
鉄が足りないと、ミオグロビンも不足してしまい、筋トレの効果も上がりにくくなるでしょう。
プロテインを摂りながら、筋トレをしてもなかなか筋肉が増えない!という方は『鉄不足』も考えてみては。
酵素の一部となる
鉄の働きとして、酵素の一部として働くことはあまり知られていないかもしれません。
チトクロムという代謝酵素の中にも鉄が組み込まれています。
チトクロムはエネルギー代謝の一部も担っていますが、重要なのは『薬物の代謝』です。
鉄が不足すると、チトクロムの働きが悪くなり、薬物の代謝が遅くなってしまいます。
どんな薬を飲んでも、すぐに副作用が出てしまう!というあなた。
もしかしたら、『鉄不足』かもしれません。
脳内ホルモンを合成するのに不可欠
鉄は脳内ホルモンを作るのにも必要なんですね。
鉄が不足すると、うつっぽくなったり、精神不安定になったりします。
以前の記事を参考にしていただけると幸いです。
なぜ、鉄は不足しやすいの?
それでは、次に鉄はなぜ不足してしまうのか?ということについて述べていきます。
自分は鉄は足りてるよ〜って思っていますか?
ですが、意外なところで鉄は失ってしまいます。
そして、体の外から十分に補給することもそう簡単ではありません。
まずは鉄を失ってしまう理由を挙げてみます。
- 生理による出血、子宮筋腫からの出血
- 運動する機会が多い
- 汗をかく量が多い
- 子供の成長期
- 妊娠中、授乳中
- ダイエット
- 消化管からの出血
この中でも、運動したり、汗をかいたりすることで鉄を失うということは、意外なのではないでしょうか?
それではそれぞれ解説していきます。
生理による出血、子宮筋腫からの出血
生理や子宮筋腫による出血は、もちろん女性に限った話ですが、鉄が不足する最も多い原因と考えられます。
生理による出血では鉄を1ヶ月で30mg失うと言われています。
子宮筋腫があると生理による出血量がより多くなり、1ヶ月に鉄を45mg程度失うと言われています。
1日に換算すると1.0~1.5mg /日の鉄を失っていることになります。
女性は大事な鉄を失いやすいのですね。
運動する機会が多い
アスリートであったり、体育系の部活動で走る機会が多い場合には、足の裏で赤血球が壊れやすくなるため、貧血になることがあります。
次の項で説明する「汗をかく量が多い」ことも鉄を失う理由となります。運動量が多いと当然、汗をかく量も多くなります。
激しい運動をして汗を2-3Lかくと、鉄分を1-2mg失うと言われてます。
1回運動しただけではたいしたことはないですが、毎日続けて運動すると、ほぼ間違いなく鉄不足の原因となります。
陸上選手、バスケットボール選手、サッカー選手など走る距離が長いと、鉄不足のリスクは高まります。
アスリートの貧血は意外と多いのです。
体を鍛えていれば、問題ないということはないのですね。
走るスタミナが今ひとつ・・・という人は、もしかしたら『鉄不足』があるかもしれませんね。
あなたのお子さんがスポーツ選手をしていて、伸び悩んでいるようでしたら、『鉄不足』の可能性も考えてみましょう。
僕も少しの間ですけど、中高生の時にバスケットボールをやっていました。体力は同級生より無かったように思います。おそらく、『鉄不足』がひどかったのではないかと推測されます。当時は知る由もありませんでした。
汗をかく量が多い
前項で解説した運動量が多い人の他にも、汗を多くかく人はいますね。
緊張しやすい人、多汗症の人、寝汗をたくさんかく人など。
これらは自律神経の不調や血糖値のコントロール不良も考えられるため、そちらの解決も必要かもしれないですね。
汗をかくと、鉄がどんどん体から出ていってしまいますので、自律神経もより調子が悪くなる可能性が高いです。
子供の成長期
子供の成長期には、鉄の需要がより高まります。
特に『骨の成長』です。
骨の成長に必要な3大栄養素、ご存知ですか?
- タンパク質
- ビタミンC
- 鉄
これらは骨を頑丈にするコラーゲンを形成する栄養素です。
このうち、どれか一つが欠けていても、骨の成長は抑制されてしまいます。
あれ?カルシウムは?って思う方がいらっしゃるでしょうか。
カルシウムももちろん骨の構成要素としては必要ですが、上の3つの栄養素ほど重要ではないのですね。
妊娠中・授乳中
出産のご経験がある方は、妊婦検診の時に『貧血がありますね』って、ほとんどの方が言われたのではないでしょうか。
鉄はおなかの赤ちゃんの成長にとっても、非常に需要な栄養素です。
授乳中にも、多くの鉄が必要となります。
お母さんが摂った鉄は、赤ちゃんに優先的に回されていくのですね。
そのぐらい鉄は大事なんです。
食事中の鉄分だけではとても足りないため、積極的に鉄剤やサプリメントで補給する必要があります。
ダイエット
ダイエットを頑張り過ぎてしまうと、やはり栄養失調になりやすいです。
野菜を頑張って食べていても鉄分は補給されにくいため、やはり鉄不足になります。
やはり科学的に安全な方法でダイエットをやるべきでしょうね。
消化管からの出血
こちらは医療の対象となります。
黒い便、赤い便が出る場合は、すぐに病院を受診しましょう。
1日に失われている鉄分
今まで解説してきたことを総合すると、1日に失われる鉄分をおおむね推定できます。
特に運動などをしていない通常の状態でも、尿、便、汗から1mg/日程度の鉄が失われると言われています。
そのことを加味すると、以下のようになります。
- 男性、閉経後の女性:1mg/日
- 生理のある女性:2mg/日
- アスリートの男性:2mg/日
- アスリートの女性:3mg/日
鉄が不足しないためには、少なくとも上記以上の鉄を食物などから補給しなくてはならないことになります。
鉄は食物中から補給できないの?
今までの解説で、鉄がすごく失われやすい栄養素だということをご理解いただけたでしょうか。
「それじゃあ、頑張って食べて鉄分補給しよう!」という気持ちになりますね。
それでは、まず鉄分が多く補給できると言われている食べ物を見てみましょう。
1食の一般的な量 | 鉄の含有量 | |
牛レバー | 60g | 2.4mg |
豚レバー | 60g | 7.8mg |
鳥レバー | 60g | 5.4mg |
小松菜 | 70g | 1.96mg |
ほうれん草 | 70g | 1.4mg |
豆乳 | 200ml | 2.4mg |
枝豆 | 50g | 1.25mg |
やはりレバーの鉄分は突出して多いですね。
豆類の鉄分が多いことは意外なのではないでしょうか?
でも、「なーんだ、簡単に鉄分って摂れるんじゃない?」って思いますか?
鉄のやっかいなところは、消化管での『吸収率』の低さです。
レバーなどの肉に含まれる鉄は『ヘム鉄』と呼ばれ、吸収率は比較的高いものの、10~20%程度です。
そして、小松菜や豆類などに含まれる鉄は「非ヘム鉄」であり、吸収率は非常に低く、2~5%程度です。
ヘム鉄は血液の成分でもあり、生理的な鉄であるため、吸収率は高いのですね。
しかし、非ヘム鉄は次のような要因で吸収されにくいのです。
- 胃の中で還元される必要がある(胃が弱いと還元されない)
- 腸の中でフリーラジカルという活性酸素を出してしまい、吸収を妨げてしまう
- 非ヘム鉄は亜鉛、銅などのミネラルと同じところで吸収されるため、他のミネラルと競争になってしまう
非ヘム鉄とビタミンCを一緒に摂れば、吸収率は上がりますが、それほど大きな効果は期待できません。
以上のように、比較的吸収されやすいヘム鉄でも吸収率が10~20%であり、頑張って食べてもそれほど多くの鉄が摂れるわけではありません。
いくら鉄が多いからと言って、レバーを毎日食べるというのも現実的ではないでしょう。
鉄が不足しやすい人は、やはり食べ物以外から補給すべきでしょう。
食べ物から鉄分を補給するのが無意味なわけではありません。最低限の鉄分はしっかり食べ物から摂るべきでしょう。
お茶(タンニン)やコーヒー(クロロゲン酸)をよく飲む人は、鉄の吸収を妨げてしまうことがあるので注意してくださいね。
じゃあ、どうやって鉄分を補給すればいいの?
あなたはもうお分かりかと思いますが、鉄分が不足するのが必至である人は、やはり『サプリメント』で補充すべきです。
生理のある女性は全員飲むべきです。
アスリートや激しい運動を日課にしている人もです。
汗かきの男性もです。
そうなると、いかに副作用が少なく、良質なサプリメントを選ぶかが重要となってきます。
鉄のサプリメントについてのお話しはまたの機会にします。
また、鉄不足について調べる検査についてもお伝えする機会も持ちたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こんにちは!こばやし内科クリニックの小林です。
今回は現代人のほとんどが不足していると思われる『鉄』についてのお話です。
摂れているようで摂れていないのが『鉄』です。そして、失う機会が多いのも『鉄』です。
この機会に『鉄』のことに詳しくなって、最高の体調を目指しましょう!